キャプテン・アメリカ/シビル・ウォーの考察

キャプテンアメリカ シビル・ウォーを本日二度目の視聴。

MCUはいつ見ても何回見ても「こんなに面白いのに最新作はもっと面白いのか」という気持ちにさせてくれるからやめられない。内容についてはいくらでも転がっているので割愛。
今作はキャプテン・アメリカvsアイアンマンの対立を謳い文句にした映画である。
その中に多くの「対立」が隠されているような気持ちになるので、勝手に妄想をする。
 
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今回の映画ではキャプテン・アメリカのタイトルを冠しながら、アベンジャーズの崩壊の物語がえがかれている。それぞれのキャラの抱える矛盾とメンバー同士の矛盾が対立構造を生んでいた。キャプテン・アメリカが本当にかっこいい。
 
(0)ファンとしては「どっちが正しい」議論をせねば。
 
前提として今回は最終的にスティーブかれてトニーか正しいかを答えをいったん出してしまおうと思う。これは、ファンとしては辛い行為である。「どっちの気持ちもわかる」からである。それぞれの立場にたってそれぞれが正しいからである。そうでなくては矛盾としてなりえない。どちらかが正しいのであればそれは勧善懲悪の物語であり、対立や矛盾を描くことはできない。
だが、それでもファンである我々はいったんその気持ちを(カッコ)にいれて答えを出すべきだと思う。(本当はカッコにいれた気持ちが大事なんだけど。)
 
彼らの対立の中にある共通点が人類のための正義だからである。
正義が何かの議論はここではさておき、「人類のため」であることに疑う余地はない。そこを確定させるテーマはアベンジャーズ2で描かれている。
「人類のための」ものであるならば彼らの抱える対立はそれぞれ「人類から」支持されねばならない。
それは、我々ファンに他ならない。(今作では彼らの選択に対して劇中での支持者はいない。協定を求める世界は支持者でなく対立を引き起こす存在である。)
彼らは物語の中にアイデンティティを持つ一方で、ファンからの支持なしにはアイデンティティを保てないのである。
(構造的に第四の壁を超えてくるこの物語に興奮せざるを得ない!ワクワク)
 
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さてそれでは支持するためにそれぞれのキャラクターの抱える矛盾を、整理する。
彼らの対立は上にも書いた通りそれぞれのキャラクターの矛盾の上になるものであるためである。
視点として
『行為』⇄『理念』
『時間性』⇄『無時間性』
と関連・対比させたい
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(1)アイアンマン-トニー・スターク
 
アイアンマンについて。
 世界最大の軍事企業のトップである社長が会社のno.2の悪巧みで拉致され、友の命を犠牲にヒーロー、アイアンマンとして誕生する。
 彼はそれまでの「行い」を過ちと認め生き方を変える。人の弱さを知り、行動こそが人格であると考える。(だからこそこれまでの行動に対し自責や後悔の念を抱く)
 
 また、彼には『時間』が流れている。アイアンマン誕生の瞬間、彼はまさに時間との戦いであった。ほんの数秒のために大切な友を失った。アイアンマンの製作過程ではいくどとなく時間性・積み重ねを現す「録画シーン」が出てきた。また彼は、幾度となく過去の行為を咀嚼し直してきた。人間が時間性をもつというのは過去の行いを脳内で咀嚼し、未来に考えを寄せるということである。当然といえば当然だが、そうでなくては時間性をもつとはいえない。これこそが彼のオリジンである。
 
というわけで
アイアンマンは「行動を人格とする」「時間性をもつ」ヒーローである。と考察する。
 
時間性をもつ存在はそもそもとして矛盾する存在である。
「過去」と「未来」で違う存在であるから。
また、時間性をもつ存在にとって、「過去」は解釈で変わる。人間は成長するに従いいくどとなく過去を解釈し直すのである。
また彼は、「行為を人格とする存在」として、今作アベンジャーズそのものに対する矛盾として描かれる。
ウィンターソルジャー(洗脳されていた)に両親を殺された事実を知った彼は私的復讐者としてウィンターソルジャーを殺そうとする。
アベンジとは、復讐を意味する言葉である。似た言葉のリベンジの意味する「私的な恨みを返す」というようなものとは違う。アベンジは不当な行為に対する正義の実行という意味である。アベンジャーズは決してリベンジャーズではなかった。
しかし、ウィンターソルジャーを殺そうとするとき、彼は間違いなく「リベンジャー」であった。その引き金は「行為」であった。
 
また、これは時間性に矛盾する行為である。過去の私怨に対する復讐する行為は、過去の行為の意味づけの固定に他ならない。過去を解釈し続ける存在、として産まれたアイアンマンはそのオリジンに対する矛盾を抱えることになる。
 
(勢いで書いたため順番が逆になったが、アイアンマンの存在としての矛盾→アベンジャーズへの矛盾の順番である。当然)
 
 
(2)キャプテン・アメリカ-スティーブ・ロジャーズ
 
 産まれながら身体能力に恵まれなかった青年・スティーブ・ロジャースは崇高な愛国心をもつ男であった。彼は自分の正義のために、アメリカのために幾度となく兵隊に志願する。それでも報われぬ彼の思いは「超人化計画」によって実現可能なものとなる。
彼が大事にするのは、理念をもって実現にむかむたかどうかである。
だからこそ、1作で政府のプロパガンダとして利用された青年は、2作では政府に対して懐疑・反対の立場をとる。彼は彼の理念を尊ぶ。行いを省みるときは、理念のもとにあったかどうかを重んじる。人の強さを知り、理念こそ人格であると考える。
彼はウィンターソルジャーのかつての行いを責めはしない。彼の意志ではなかったから。スカーレットウィッチに対してもそうである。
また彼は、「無時間的」な存在である。彼が超人的なパワーを手に入れたのは何度も兵士に志願したから(時間を重ねたから)ではない。その理念を買われ実験台として等価交換しただけである。彼が超人として時間を重ねる描写はない。あったのは「数十年の時を重ねない」姿である。
変えようのない崇高な理念とそれを実現する力。それはまさに無時間的といえる。そこに成長がないから。(アベンジャーズ2で氷漬けの前後で違うという表現があったが、彼が変わったのではなく周りの時が流れただけである。事実、今作でシャロンといちゃつく)
 
まとめると
キャプテンアメリカ・アメリカは
「理念を人格とした」「無時間的」な存在である。
 
無時間的な存在は矛盾しえない。変化のないもの=同じものが矛盾するというのは起こりえない。
 
では彼はなんの矛盾を抱えたのであろうか。
それは、存在そのものに対する矛盾である。その存在を根底から覆されるような矛盾にぶつかるのである。
 
ひとつは、人類のための正義を貫こうとする彼の前に人類そのものが立ちはだかることである。これまでとはレベルの違う「大多数の意見」。正義・理念(存在そのもの)の意味を問わずにはおれない。
しかし、この矛盾に対立するなかで、さらなる矛盾につきつけられる。1人の友のため、正義のために彼は世の中と、かつての友とを混沌に導くのである。崇高な精神、正義そのものの矛盾に彼はぶつかるのである。
彼の理念が矛盾に脅かされることは、アベンジャーズそのものが矛盾に投じられるということである。
 
まあでも最終的にキャプテンは自身の理念を貫く。今まで彼の「象徴」のように思われていた盾すらも、彼の理念の前では捨てても構わない物だった。アベンジャーズの物語みたいな本作だったけどタイトルがキャプテン・アメリカだけあって彼のかっこよさが描かれ続けた。
国家のプロパガンダ→政府転覆→戦友・愛用の武器との別れ(バッキーともまた別れる)
ずっと人の強さを、自分の意志を、理念を大事にし続けるキャプテンの美しさがたまらん。ああ、映画の感想になってしまった。
 
(3)というわけで
 
今回の対立は上記のようなそれぞれの抱える矛盾が
「アベンジャーズ」そのものに対して表出することで起きた対立と考える。
 
そしてそれは、
「行為を人格とする」vs「理念を人格とする」
「時間性のある存在」vs「無時間的な存在」
という対立構造を同時にとると妄想する。
 
彼らの抱える矛盾はそれぞれ自身のオリジンへの葛藤であり、それぞれに正しさがある。
ちなみに、ヴィジョンやウィッチ、ウィドウ、ホークアイもオリジンとの矛盾や葛藤(?)が描かれていた。
パトリオットもか。あれはどうなんだろう。
 
 
(0)で言った通り自分自信が「どちらが正しいと思う」意見をきちんと投じることが両者の存在を支えることであると思うので
 
(4)私が正しいと思う方
基本的にはアイアンマンが正しい。ていうか劇中でアイアンマンが言ってること全部正しい。完全に同意。
 
キャプテン・アメリカは1人だけが正しすぎる。みんなで目指し続けるものであるべきである姿なのである。裏返せば、たどり着けないもの=存在しえないものである。(だから時間が流れてない。)
人類のため、とは極端な話をいえば人類の長生きのため、である。キャプテン・アメリカが正しい行いをただ1人行うことで、100年後の人類にとってどうであるかといえば人類の解決能力が落ちるだけである。
わけわかんないけど超人が助けてくれた、より人類が超人の使い方を覚えたほうがマシだと思う。そもそもアメリカにはパトリオット量産する力あるんだし。
 
 
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んー、勢いで好きなように妄想考察したから満足した。
この2つの矛盾・対立に対してのブラック・パンサーが「違う角度の答えがあるよ」という姿をみせるのがまたかっこいいんだ。
でも復習はオレで終わらせるぜみたいな展開は漫画でめっちゃあるから、それはなんか「ああこういう感じね」ってなる。まあでもそれは別にいい。
とにかくかっこいい。くうはやく次回作が見たい。
 
そういえばバッキーが目覚めるのは水に落ちた時なのかしら。一番最初も谷底に落ちてたからかしら。
最後のキャプテンからの届け物は専用電話?